腹腔鏡下手術中に気胸および著明な皮下気腫を来たした症例

摘要

腹腔鏡下手術は,従来の開腹術にはみられない多彩な周術期合併症を引き起こす可能性がある.今回,鏡視下手術中経験した合併症を紹介する.(症例1)52歳女性.胆石・胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された.気腹20分後に経皮酸素飽和度が低下し血圧も低下した.胸部X線撮影で右気胸が確認された.胸腔ドレーンを挿入し呼吸状態は改善された.気胸の原因として,横隔膜の脆弱性が疑われた.(症例2)86歳女性.腹腔鏡下後腹膜到達法(retroperitoneal approach)で右腎癌に対して右腎臓摘出術が施行された.気腹後から呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO_2)が急に上昇し換気条件を変更しても改善されなかった.皮下気腫を認め,徐々に広範となった.両側大腿部から頸部まで進展したため,手術後も皮下気腫が改善するまで気管内挿管下呼吸管理を行った.腹腔鏡下手術中は気胸,皮下気腫などの合併症が起こり換気障害を来たすことがあるので,早期発見につとめ,周術期も注意深く観察する必要がある.