高温高速軸受用樹脂保持器の開発

摘要

転がり軸受の保持器には，金属に比べて自己潤滑性が良好なことから樹脂材料が広く適用され，また一般に生産性，組込み性などの点から，射出成形可能な熱可塑性樹脂の冠型形状品が使用されることが多い．しかし，樹脂保持器は高温高速回転条件下において，熱により樹脂材料の剛性が低下し，遠心力が加わることで，クリープによる寸法変化（以下クリープ寸法変化と称す）が大きいという問題がある．特に，自動車のエンジン補機用軸受では，使用温度が200℃に達するものがあり，耐熱性と材料コストのバランスのとれた材料が必要となる．樹脂保持器に使用されている材料は，図1に示すように耐熱性の向上とともに材料コストが上昇する．上記のような過酷な使用条件下では，熱可塑性樹脂の中で最高の耐熱性を持つポリエーテルエーテルケトン（以下PEEKと称す）が使用される場合があるが，未だ現状では高価である．本報では，200℃環境，高速回転条件において，PEEK同等の耐クリープ性を持ち，より安価な樹脂保持器の開発を行った結果について報告する．