腎疾患領域における アフェレシス: 難治性ネフローゼ症候群に対するLDLアフェレシス

摘要

アフェレシス療法は体外循環によって血中か ら病気の原因となる液性因子(抗体,炎症性サイ トカイン,有害代謝物質,中毒物質など)や細胞 (リンパ球,顆粒球,ウィルスなど)を除去して病 態の改善をもたらし，さらに二次的効果として免 疫能の賦活や細胞機能の回復が生じ,循環動態 の改善も期待できる治療である.腎疾患におい ても,原発性,二次性ともに免疫異常がかかわる こともあり,上記の原因要因の除去のみならず， 免疫機能の回復という面でも,さまざまな疾患で アフェレシス療法の適応が認められている.その 中でも,ネフローゼ症候群をきたす疾患群では, 治療抵抗性で長期化する症例に随伴する高コレ ステロール血症に対して,これを急速に改善する low density lipoprotein(LDL)アフェレシス療法 が,脂質異常の是正のみならず,しばしば急速な 寛解導入をもたらし,腎機能の低下を阻止するこ とが知られており,現在巣状糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis ； FSGS)には保険 適用がされている.本稿では,ネフローゼ症候群における脂質異常症の発現機序とその腎障害性(lipid nephrotoxic-ity)の最近の考え方を示し,これに対するLDL アフェレシス療法の実施方法,エビデンスを伴っ た病態進展阻止効果の実態とその機序に関して 述べ,国内外の診療指針での位置づけおよび展望 について概説する.