初老期アルツハイマー病臨床的特徴

摘要

初老期アルツハイマー病（AD）は1907年AIzheimerによって記載されたが，その後高齢発症のものを含めてADと呼ぶようになった。しかし，臨床的に初老期ADは高齢発症ADと異なることが多くの臨床家によって経験されている。本文では以下の点を強調したい。1．初老期ADの頻度は低いが，遺伝子異常などによる多様性がみられる。2．初老期ADでは前頭葉，側頭葉，頭頂葉，後頭葉などの巣症状がみられるが．前頭側頭型認知症との異同が間鼠となる。3．失認．失行，失語，遂行障害などの認知機能障害のほか，掛軌暴行や自動車事故などの行動障害，妄想，抑うつ，不安，焦燥，襲撃，脱抑制などの心理症状．てんかんやミオクローヌスなどの神経症状がみられる。4．初老期ADは進行が急速で，高齢発症ADより死亡率が高い。5．ADの治療薬でも初老期ADと高齢発症ADで効果の異なることがある。以上の点を留意して，初老期ADの診療に当たることが望まれる。