冠動脈プラークの病理

摘要

冠動脈プラークは，幼少児期より形成され，危険因子 の種類や罹患期間などによりその病理組織像は大きく 異なっている。プラーク破綻は「破裂」と「びらん」に大別される。 破裂は，脂質コアを覆う被膜の断裂によるもので，大 きな脂質コアと薄し被膜を有し，炎症細胞浸潤が強く， 血管新生に富む，などの特徴を有するプラークに起こ りやすい。被膜断裂には，ブラ一クに加わる力学的ス 卜レスが要因となる。_方，びらんは，被膜の破綻が 脂質コアに達しない浅い傷害で，脂質沈着や炎症細胞 浸潤に乏しく，平滑筋細胞と細胞外基質に富んだブラークに多くみられる。プラーク内は低酸素状態のため，新生血管が誘導され るが，この破綻によると考えられるプラーク内出血は， ブラ一ク内圧の上昇や酸化ス卜レスを増強させる。加 えて低酸素環境では，炎症性サイ卜力インの産生，細 胞死、アポ卜一シス，などが惹起され，これらは脂質 コアの増大や被膜の脆弱性に繫がる。