顔面神経麻痺をきたした悪性外耳道炎の1例

摘要

悪性外耳道炎の病態は糖尿病患者に生じる緑膿菌感染によ る治療抵抗性の側頭骨骨髄炎であり、強い炎症による骨破壊 がみられ、頑固な耳痛や外耳道の壊死性肉芽を生じる疾患で ある。病変が進展まるとその方向によりさまざまな脳神経麻 痺症状をきたし、外耳道から内方に広がり茎乳突孔に達すると顔面神経麻痺が生じることがある。Chandler [1]は1977 年に72例の悪性外耳道炎をretrospectiveに検討し、顔面神 経麻痺の合併率は32%であったと報告している。本疾患は頭 蓋底方向に進展波及した場合は重篤な頭蓋内合併症をきたす 可能性があり、また脳神経麻痺症状をきたした場合は致死率 が上がると言われており[1，2]、診断?治療において迅速か つ適切な判断を要する。今回、顔面神経麻痺をきたした悪性 外耳道炎の1症例を経験した。本症例の治療経過を提示し、 文献的考察を加えて報告する。