将来のモビリティと自動車文化：消費者の自動車に対するニーズと意識の変化

摘要

日本の自動車市場は，日本の社会システムにおける変化と，それを背景にしたライフスタイルの変化，そしてユーザニーズにおける変化を背景として大幅な変化を遂げている．自動車の広範な普及は，日本経済における高度化と歩みを共にしてきたが，所得水準の向上は，消費者のニーズを「生活の質的向上」に変化させた．また，日本におけるドライバに占める女性比率の上昇と，少子高齢化の進展は，自動車の機能性を「移動手段」に集約させ，「家電化」させるに及んだ．一方で，「生活の質的向上」へのニーズは，自動車に対して「居住性」を求めるニーズを生み出した．近年におけるプレミアムモデルに対する需要は後者の要因を背景とし，軽自動車を含むコンパクトモデルへの選好は後者の要因を背景としてい，る．社会システムが，少子高齢化を前提とし，「精神的豊かさ」を重視する方向への変化を既定路線とするのであれば，自動車市場は今後ますますプレミアムモデルとコンパクトモデルとに二極分化を進めることになろう．