A3003/SUS304Lクラッド材接合部の微細観察－真空圧延接合法によるA3003/SUS304Lクラッド材の接合部特性（第1報）

摘要

アルミニウム合金と鋼及びステンレス鋼の接合は，溶融溶接ができないため，固相接合が適用されるが，拡散接合あるいは高温圧延接合では，高い接合部強さが得られない．これは，主に接合界面に存在するアルミニウム酸化物とその成長及びFe-Al系の金属間化合物の生成によると考えられる．これらの要因を抑制する手法として，西尾等は，真空圧延接合法を提案し，本法で製作したアルミニウムと鋼の2層クラッド材は，アルミニウム母材と同等の接合部強さを持つことを示した．真空圧延接合法によるアルミニウム合金と鋼及びステンレス鋼の2層クラッド材は，その高い接合部強さから，アルミニウム合金構造物と鋼及びステンレス鋼構造物を連結するための中間継手としての利用が考えられる．すでに著者等は，大型の真空圧延接合装置を試作し，A3003と鋼及びSUS304Lの2層クラッド材を製作し，高速艇とLNG船の構造用異材継手の一部に適用した実績を持つ．真空圧延接合法によって得られる高い接合部強さは，接合界面に存在するアルミニウム酸化物の成長及びFe-Al系金属間化合物の生成の2つの要因の抑制効果によると考えられるが，接合界面の微細観察に基づく接合メカニズムの検討はなされていない．そこで本研究では，真空圧延接合法を用い，A3003とSUS304Lを種々の条件で接合し，A3003/SUS304Lクラッド材を製作し，接合部強さと接合条件の関係を把握するとともに，接合界面を透過電子顕微鏡を用いて観察と分析を行い，接合メカニズムを検討した．