核燃料サイクルを巡る動向と展望：核燃料サイクルの意義と今後の展望

摘要

エネルギー源の主流は石油，石炭，天然ガス等の化石燃料であるが，これらは一度使ってしまうと再利用できないという「使い捨て」の燃料である。しかも，燃焼するときに大量の二酸化炭素を発生させて環境に負荷を与える。 それに比べて，原子力エネルギーはうまく利用すれば「使い捨て」にならない。それが核燃料サイクルと呼ばれるウランの使い方である。その上，二酸化炭素の放出はない。もともと天然ウランには，核反応をしやすい235{sup left}Uは0.7％しか含まれていないが，残りの99.3％の238{sup left}Uは核反応しにくい。ところが，この238{sup left}Uは原子炉の中でプルトニウムに変化していく。通常原子力発電に使われる軽水炉と呼ばれる原子炉内で生成されるプルトニウムは，239{sup left}Pu，240{sup left}Pu，241{sup left}Puと242{sup left}Puがある。 このうち，約70％を占める239{sup left}Puと241{sup left}Puは，いわゆる「燃えるプルトニウム」と言われる元素で，それを燃料として軽水炉で使う方法を「プルサーマル」という。 軽水炉と呼ばれる普通の原子炉は中性子のエネルギーが小さい（1eV以下）が，エネルギーの高い（約10keV以上）領域で使う原子炉のことは高速炉と総称される。 さらに，その中でも，消費するプルトニウムよりも，発生するプルトニウムの方が多い高速炉のことを高速増殖炉(FBR, Fast Breeder Reactor)と呼び，資源を繰り返して使えるので，当初「夢の原子炉」としてもてはやされてきた。今また再注目されてきている。核燃料サイクルが確立すれば，エネルギー資源を持たないわが国にとって，誠に意義深いものと言える。