シリンジ一体型樹脂製注射針の研究開発

摘要

本稿執筆時点（2021年5月末）において、国内における新型コロナウイルスのワクチン接種数は約500万人であり、人口の約0.4である。今後、加速度的に接種人数が増加していくことを切に望むが、さまざまな課題があるため、われわれは互いに協力体制を築き上げて進んでいくしかないと考えている。ワクチン接種の課題の中には注射器具に関する事項も含まれ、薬液をムダにしない注射器具の話題が世間を騒がせたことは記憶に新しい。本研究は注射針を樹脂化するという取組みであるが、その実用化には技術的な課題もさることながら、法律的な規制にも深くかかわるために難易度が高いということは言うまでもない。本稿では、産学連携事業にて樹脂製注射針の開発に取り組んだ経緯について述べる。また、本取組みは平成22年度および平成24年度の戦略的基盤技術高度化支援事業（サポイン）にて行ったものであることを付け加える。なぜなら、通常、サポイン事業は3年間にわたる研究期間が許されているが、平成22年度のサポイン事業は短期間で行う特別枠が設定されており、その終了を待って平成24年度の3年間のサポインに採択されたという経緯があるからである。