鋳造CAEを用いた型割れ予測技術

摘要

ダイカスト産業は、国内市場の横ばい傾向と海外市場の成長の中で国内外のメーカーの競争が激化しており、メーカーには顧客要求を満足するための技術の高さや工法の幅が求められている。当社では、ハイサイクル化による生産性向上を目的とした冷却性能強化を実施しており、金型内部に非常に多くの冷却穴を配置している。一方、近年は自動車部品の軽量化やモジュール化による製品形状の複雑化を背景に、冷却穴の配置が非常に難しくなっているため、冷却性能の基礎評価を実施し、最も冷却効率を向上できる方法として冷却穴を金型の製品部表面に近づけて配置している。一方、この影響で冷却穴内部を基点とした型割れが発生し、水漏れが生じてしまう異常が頻発していた（図1）。金型内で水漏れが発生すると、粗材外観に黒ずみが生じるとともに、粗材の内部品質にも悪影響を及ぼす。ますこ、水漏れの発見が遅れると大量ロットアウトの原因にもなるため、型割れは重大な金型故障の一つであり、ライン可動率（「可動率」は、動かしたいときに設備が正常に動いた時間の割合、設備の信頼性を示す）を低下させている。ハイサイクル化と可動率向上を両立するためには、型割れ部位を事前に予測して未然に防止することが急務である。そこで、鋳造CAEを用いてダイカスト工程内の金型内応力履歴を解析し、過去の金型の割れ実績との照合によって予測手法の妥当性を検証した後、実用化したので報告する。