アオザメの遺伝的集団構造の解明に向けて

摘要

ア才ザメ (Jsurus oxyrinchus)と いうサメをご存知でしようか。アオ ザメは、ネズミザメ科に属する、最 大体長（全長）4mに達する比較的 大型のサメで（図1)、世界の温帯 から熱帯域に広く分布しています。 まぐろ類と同様に、体温を周囲の水温より高く保つ機能をもち、遊泳力に優れた 高度回遊性のサメです。さめ類の中では商業価値が非常に高く、曰 本では練り製品、欧米ではステーキとしてな じみの深い水産資源です。本種は主にまぐろ やかじき類を対象としたはえ縄漁業で混獲さ れており、多くの場合、いわゆる副産物とし て利用されています。各大洋で広く混獲され ていますが、大西洋での漁獲量（ここでは、 水揚げされた量と投棄された量の合計値）が 最も多く（図2)、スペインやポルトガル等が 主な漁業国となっています。大西洋まぐろ類野生動植物の種の国際取引に関する条約 (Convention on InternationalTrade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora ： CITES (ワシントン条約））の附属 書II (商取引を制限しないと、将来絶滅の危 険性が高くなるおそれがある種）に掲載され、 国際的な商取引が規制されるようになりまし た。現在、ICCATでは、2017年の資源評価 やその後の管理方策の効果検証の結果を受け て、大西洋におけるアオザメの資源管理措置 の導入が議論されており、世界的に高い注目 を集めています。保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas: ICCAT)の報告 では、1995年には、南北大西洋あわ せて約8,400トンが漁獲されていまし た。ICCATが2017年に実施した資源 評価では、北大西洋のアオザメ資源は 「乱獲の状態」であり、「過剰に漁獲」 されていると推定されました。その後、 北大西洋系群の資源状態の悪化を契機 として、本種は、絶滅のおそれのある