切除可能局所進行食道癌に対する術前治療の進歩

摘要

切除可能な局所進行食道癌は，本邦の食道癌のうち約50%を占める集団であり，その解剖学的特性や生物学的特性から，治療に難渋する疾患の一つである。そして手術療法のみでは再発割合が高いことから，周術期治療の開発が世界中で進められた。この対象に対して,欧米では手術療法に術前化学放射線療法（chemoradiotherapy : CRT）を組み合わせた集学的治療の開発が進められ，CROSS試,験やCALGB9781試験をもとに，術前CRTが局所進行食道癌に対する標準な周術期治療として確立された。一方，本邦においては日本臨床腫瘍研究グループ（Japan Clinical Oncology Group : JCOG）が中心となり周術期治療の開発が進められ，当初テガフール座剤やブレオマイシン，術前放射線治療を組み合わせた集学的治療の比較（第一次研究）や，周術期の放射線治療の比較（第二次研究）,術後放射線治療と術後シスプラチンとビンデシン併用療法の比較（第三次研究）が行われた。その治療開発と同時期に, 頸部?胸部?腹部の3領域のリンパ節郭清術に代表される手術療法の改良も進められ，手術単独への術後シスプラチンとビンデシン併用療法の上乗せの検討（第四次研究），手術単独への術後シスプラチンと5-FU併用（CF）療法の上乗せの検討（第五次研究,JCOG9204試験）が行われた。JCOG9204試験の結果が報告された当時は，手術と術後CF療法が標準治療であった。