憧れのブランドを味わいつくそう！特選素材スピーカーのためのシステムレシピ：システムレシピを読む前の心構え

摘要

オーディオコンポーネントのなかで、スピーカーほど不可解で同時に魅力的なものはない。 まるで人間のようだ、外観はどれも大差ない。 マグネットによって作られる磁界内に置いたボイスコイルに信号を流して磁力を得、振動板で空気を動かし発音する構造はどれも同じ。 誕生以来、最も変化の少ないコンポーネントといわれているのは御存知だろう。 人間も性別、体格、肌の色といった違いはあるものの、約60 兆個の細胞、206個の骨でできている点では皆、同じである。 かけ離れた構造、外観を持つ人はいない。 ところがその性格や振る舞いとなると、十人十色という言葉があることからもわかるように、まったくもって予測がつかない。 何でもソツなくこなす秀才が意外に脆い一面を持っていたり、凡庸と思われていた人が意外な才能で周囲を驚かせる活躍をしたり、大人しい人が文字通り君子豹変したり、楚々たる美人が悪魔のような本性を持っていたりと、その内実は外観からはなかなか推し量ることはできないものだ。 スピーカーは機械だから人間ほど複雑怪奇ではないが、その振る舞いは－すなわち出てくる音は－予測がつけにくい。 同じような素材を使い外観もよく似たふたつのスピーかーから、まるで正反対の音が飛び出してくるのは珍しくはないし、貧相にしか見えないユニットがとても心地よい音楽を奏でてくれることもある。 高価なユニットが見かけ倒しに終わることも少なくない。 ただこごで問題にしているのは音楽の再生能力と音の魅力についてであり、音そのもののクォリティが高級なユニットになるほど向上する傾向があるのは確かである。