新しい学際領域としての腫瘍循環器学がん治療医の立場から

摘要

がんと心血管系疾患を併発する患者が増加している. がん治療に際し,心不全,血栓塞栓症などの心血管系合併症に注意が必要である. 心血管系疾患を治療前後に合併する場合は循環器内科医との連携が必要である. がん治療医が循環器内科医と連携して心血管系合併症を適切に管理する機会が年々増加している.その背景には次のようないくつかの要因がある.①進行がんの病態に心血管系合併症のリスクを上昇させる因子があること（腫瘍による血管への圧迫や浸 潤,腫瘍血管造成,凝固異常など），②がんと心血 管系疾患に共通の発症リスク因子があること（加齢,肥満,喫煙,飲酒ほか），③高齢化社会の到来により,がんと心血管系疾患が併存する患者が増加していること（がんと心血管系疾患は日本人の死因の1位と2位），④進行がんに対するがん薬物療法の進歩により治療期間と生存期間が延長していること,⑤最近のがん治療,特にがん分子標的治療薬によるがん薬物療法の合併症に心血管系障害が比較的高頻度にみられること,などが挙げられる.本稿では,がん治療医または腫瘍領域からみた腫瘍循環器学の現状と課題について考察する.