光を感知して色が変わるシアノバクテリオクロム

摘要

ほとんどの方は、夏場の池や湖の水面が緑色に覆われた様子を見たことがあるのではないだろうか。この現象は青粉（アオコ）といい、藍藻またはシアノバクテリアと呼ばれる光合成を行う細菌が異常繁殖することによって起こる。シアノバクテリアは太古の地球から存在し、最初に酸素を発生させる光合成を行った生物と言われている。現在、地球上のあらゆる場所?環境で生息することが確認されており、様々な生存戦略をもって光合成を行っていることが知られている。そのような中、シアノバクテリアは光を効率的に利用するために、自分に必要な光の色を見分けることができる。この反応は、シアノバクテリアが持つ光受容体?シアノバクテリオクロム（CBCR)が担っている。科学的に言えば、CBCRが特定の光を吸収すると分子構造の変化が誘起され（光変換）、これに伴って細胞内の情報伝達が働くことで、シアノバクテリアの行動が制御される。実験的に単離したCBCRは非常に色鮮やかであるだけでなく、例えば、青色光と緑色光、赤色光と緑色光、赤色光と青色光、遠赤色光と橙色光をそれぞれ照射すると、光変換によってCBCRの色が可逆的に変化する反応が観察できる（図1)。