老いに負けずに

摘要

最近，エッセイストの鮫島純子氏の講演を聞く機会が あった.NHK大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公，渋 沢栄一氏のお孫さんで,明治以後の激動の中を生き抜かれ，晩年は執筆，講演会と多忙の日をおくられている. 御年99歳であるにもかかわらず,読み原稿は一切なく，これまでの人生のこと，毎朝の明治神宮散歩による健康法など理路整然と流れるようにお話しされ，深い感銘を 受けた. 私といえば，還暦を過ぎ，勤務医として毎日せわしく過ごしている.定年を控え，今後のことも考えなくては いけないが，やはり気になるのは健康のこと，鮫島氏の 凛々しいお姿を拝見し，自分も精進せねばと焦っている.外来はメディカルアシスタントのお陰で長時間の診察もなんとか遂行できるが，手術となると寄る年波には 勝てず，慣れない手技では以前より疲れを感じる.とくにバックリング手術では，双眼倒像鏡での観察，冷凍処置などで首,腰の痛みを覚え，後遺症を心配しながら恐る恐る行っている.通常の内眼手術では患者眼と顕微鏡筒を平行な状態に保ち，また，鼻内視鏡による涙囊鼻腔 吻合術ではモニター越しに直立した状態で行うので，首 を曲げず，背筋も伸び，長時間でなければ身体の痛みはほとんど感じない.