和歌山電鐵貴志川線の歴史と近代化遺産としての登録有形文化財: 地域に光を，地域に誇りを

摘要

和歌山電鐵は和歌山県の北西部において，県庁所在地である和歌山巿と隣接する紀の川巿を結ぶ14.3kmの路線「貴志川線」を運営している(図1),貴志川線は1916(大正5)年に開業した山東軽便鉄道を起源とし，時代の変化の中で経営母体を幾度も変えながらも地域の足として運行されてきたが，マイカーの普及や少子化，道路整備の進展等の影響により,年々利用者が減少していたことから，2003(平成15)年，それまで路線を支えてきた当時の運行事業者から路線撤退が表明された。撤退の表明を受け，「貴志川線の未来を"つくる"会」をはじめとする地域住民らが路線存続に向けた様々な活動を展開し，その当時全国初となる後継事業者の公募による路線存続が決定した。行政による支援，既存事業者の協力を得て，2006(平成18)年4月から公募により選ばれた岡山電気軌道が子会社として設立した和歌山電鐵が路線を引き継ぎ，運行を行っている。