緩和領域

摘要

’がん診療における苦痛緩和，特に疼痛コントロールは依然重要な課題である.臨床疫学の発展に伴い，エビデンスに基づく診療が重要視され久しくなり，緩和医療の領域でもその努力が不断 に行われている. 本稿では,近年上梓された，がん性疼痛に関する2つのガイドラインについて概説する.1つは， 1986年の初版, 1996年の第2版から実に22年ぶりの改訂となった"WHO Guidelines for the pharmacological and radiotherapeutic management of cancer pain in adults and adolescents" （世界保健機関2018年，以下WHOガイドライン）である.かの有名な「WHO 3段階除痛ラダー」が削除され,これまで専門家の意見による部分が大きかったWHOガイドラインが,ネットワークメタ解析を取り入れるなどエビデンスに基づく科学的内容に様変わりし,専門家の間でも驚きの声の多い改訂となった.もう1つは，2014 年から6年ぶりの改定となった「がん疼痛の薬物 療法に関するガイドライン（2020年版）」（日本緩和医療学会?編,以下,緩和医療学会ガイドライン）である.