実験室型X線光電子分光装置による溶液種の観察

摘要

本稿では，真空環境下において固体表面の元素組成と酸化状態の分析が可能なX線光電子分光法（X-ray photoelectron spectroscopy, XPS）を液体試料に応用する試みについて，これまでに報告された観察技術を簡単に解説したのち，環境セルと実験室型XPS装置を用いた我々自身の研究例について紹介する。XPSでは，X線照射により試料表面から放出された光電子について静電半球型アナライザーを用いてエネルギー分光を行う。光電子が気相および液相において散乱されることを防ぐため，測定には真空環境が不可欠である。XPSは固体試料のみならず，様々な液体試料の観察にも応用されており，近年では固液界面における電気化学反応をその場観察した例も報告されている。