しゃぼん膜に潜む数学

摘要

しゃぼん膜，しゃぼん玉の数理モデルとして，極小曲面，平均曲率一定曲面と呼ばれる数学の概念がある。これらはそれぞれ，面積の臨界点，「囲む体積が一定」なる付加条件のもとでの面積の臨界点であり，変分問題（無限次元空間上の極値問題）の数学理論が創成された18世紀後半以来研究されている古くかつ新しい研究対象である。これらの概念や理論は種々の方向に一般化され，応用例として，液体の薄膜や重力が無視できるような微小液滴の形状解析，2種類以上の高分子が作るブロック共重合体のナノスケールの界面などのソフトマター研究，ブラックホールの表面形状の表示，安定で強固な物作りや美的観点をも重視した建築デザインなどがある。本稿では，これらの曲面についての数学理論の一端を著者の研究を含めてご紹介する。