治療しないという選択肢: 監視療法

摘要

“臓器温存治療戦略”の点では，監視療法（ac-tive surveillance）は前立腺がんの治療の中で最も当てはまる.早期前立腺がんの限られた患者が対象であるが，診断後即治療をするのではなく，病勢を監視しつつ進行が懸念されるときには時機を逸さず根治治療を行う治療戦略である. 監視療法の登場の背景には,PSAスクリーニングの普及と低リスク前立腺がんの診断の増加がある.PSAスクリーニングにより,わが国でも前立腺がんは男性の中で最も多く診断されるがんの一っとなった（2018年のがん統計予測では年間78,400人で男性がんの中で第4位）.一方で, 前立腺がん患者の増加に伴って，insignificant cancer,つまり生命予後にかかわらないがんの診断の割合が増加している.このような患者に対して，低侵襲化しているとはいえ手術や放射線治 療が行われることは,本来必要のない治療介入を行っている可能性があり，さらに副作用や医療費の増大につながる（図1）.