破壊靭性試験規格の最近の動向

摘要

各種大型構造物のぜい性破壊はもっとも避けるべき状況であり、製造時の溶接欠陥あるいは供用中に生じる疲労き裂といったき裂状の欠陥の存在を想定した安全保証が求められる。 そのため、材料にはき裂に対する抵抗力、すなわち靭性（ねばり）が要求される。 シャルピ試験も材料の靭性評価には用いられているので、広義の「靭性」は必ずしもき裂に対する抵抗を意味するものではないが、ここでは破壊力学に基づき評価されるき裂材の「破壊靭性」評価方法に焦点を絞る。 破壊力学に基づいた破壊靭性評価試験方法は米国及び英国を中心に規格化が進められ、現在ではISO規格にもなっている。 物理量としての破壊靭性に差異はないが、それを評価する試験方法には、破壊力学の対象となる構造、材料が各国毎に若干異なること、破壊力学そのものの発展の経緯が異なることもあって、その内容には違いがみられる。 本稿では、破壊靭性評価の歴史的な経緯と各国規格の内容の相異点、それらの最近の動向を中心に解説する。 なお、破壊靭性の有する物理的な意味自体は普遍的なものであり、それに関しては必要に応じて別報を参考にしていただきたい。