再エネ導入時のアデカシー確保

摘要

温室効果ガス排出量を中長期的に低減していく上で，再生可能エネルギーによる電力供給（以下，再エネ）は最も有効な手段の一つである．その一方で，再エネの大量導入を図るにつれていろいろな課題が出現することが，先行する欧州諸国の経験などから明らかになってきている．その代表的なものが，固定価格買取制度（FIT）等により費用回収が担保された再エネ電力が卸電力市場に投入された際に，卸電力価格を過度に引き下げる一方で，従来型の電源の設備利用率を低下させ，その双方が重畳して従来型電源の費用回収を困難にする，「ミッシングマネー問題」として知られる現象である．極端な場合には，それら電源が市場退出を余儀なくされ，結果として電力供給の安定性（アデカシー）を損ねることになる．電力中央研究所では，開発を進めてきた「需給運用シミュレータ」を用いて，再エネ大量導入時に，競争的な電力市場におけるアデカシー確保について定量的に分析した．ここではその概要と，今後の研究の展開について示す．