化学物質·放射能による土壌汚染問題を考える－環境リスクとその対策

摘要

土壌汚染対策法の施行および改正に伴い，市街地を中心とする土壌·地下水汚染が顕在化し，そのリスク低減対策が重要となっている。このため，土壌中の化学物質がヒトに与える健康影響，すなわち環境リスクを科学的に定量化するためのリスク評価システムの開発と普及を行った。2011年3月の東日本大震災の以後では，このような従来型の土壌汚染に加えて，放射性物質による広域の土壌汚染問題や津波堆積物に含有する重金属等の問題も潜在的に大きな問題となってきた。これらに共通する課題は，実際にヒトや生態系が受ける暴露（被曝）の評価を正確かつ的確に実施できるかどうかに依存している。また，土壌汚染の浄化などの現場対策において，効率的に環境リスクを低減するにはいかなる方法が適切であるか，費用対効果の高い浄化技術の選択にはいかなる方法論を採用すべきかなど，今後も検討すべき課題が多い。本稿は，このような環境リスクとその対策について，化学物質と放射性物質にかかわる環境問題を取り上げて具体的に議論した。