脳MR画像におけるラクナ梗塞検出のためのコンピュータ支援診断システムの開発

摘要

ラクナ梗塞の存在はその後に起こり得る重篤な脳梗塞と関係があるため，脳MR画像においてラクナ梗塞を検出することは重要である．しかし，加齢による脳組織の変化である血管周囲腔拡大との区別が困難であるなどの理由から，すべてのラクナ梗塞を正しく検出することは困難である．そこで，われわれは，ラクナ梗塞の検出を支援するコンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis, CAD)システムの開発を行った．現在のシステムの性能は，真陽性率96.8％，画像1枚当りの偽陽性数0.3個である．本研究では，開発したCADシステムの出力結果を使用した場合と，使用しない場合の読影医のラクナ梗塞の検出性能を調べるための読影実験を行った．この読影実験には9名の放射線科医が参加した．実験の結果，CADシステムの出力結果を使用した場合に，9名の放射線科医の平均ROC曲線以下の面積が，0.886から0.930に向上した．したがって，本CADシステムは，脳MR画像におけるラクナ梗塞の検出に有用である可能性が高いと考えられる．