計測地点間品質を用いたネットワーク品質劣化箇所推定方式の評価

摘要

本稿では，ネットワーク品質劣化箇所を精度良く推定するフロー分解方式を提案する．近年，ネットワークの複雑化，インフラ化に伴い，ネットワークの品質劣化箇所の特定が困難になってきている．このためネットワークを通過する多数のエンドツーエンドのフローの品質情報とルーティング情報を基にネットワークの品質劣化箇所を高精度に推定する方式が提案されている．この推定方式では，ルーティング情報からフローの経由リンクを決定し，品質が劣化したフローを最も少ないリンクで説明できるリンク集合を劣化箇所と推定する．従来方式では，アクティブ計測やパッシブ計測を区別することなく併用し，より多くのフロー品質情報を計測することによる推定精度の向上を試みていた．しかしながら，ただ多くのエンドツーエンドのフローを集めてきただけでは，多地点で同時に劣化が発生した場合に推定精度が低下する課題に対処できない．提案によるフロー分解方式では，ネットワーク中でフローを計測し，計測地点の前までの品質情報と計測地点より後の品質情報に分解する．これにより推定を行う際に利用できるフロー品質情報の粒度が細かくなるため，より精度の高い品質劣化箇所が可能となる．さらにシミュレーションによりフロー分解方式を評価し，品質劣化箇所の見逃し率の低下効果が実際にあることを示す．