コヒーレント受信器におけるディジタル信号処理の並列化による適応等化の性能劣化

摘要

コヒーレント受信伝送システムでは，受信器側の偏波トラッキングと搬送波位相推定が必要不可欠である.ディジタル領域でsample-by-sampleの適応等化ディジタル信号処理(digital signal processing: DSP)によって，これらの安定動作が達成される.ただし，光ファイバ伝送における符号速度は32Gbaudに達し，ディジタル電子回路のクロック周波数を大きく超えるために，DSPの並列化が必須となる.本研究では，DSP並列化による適応等化の性能劣化をシミュレーションによって定量的に評価する.並列DSP型適応等化を用いた場合の32Gbaud偏波多重四位相シフトキーイング光信号のビット誤り率特性を計算した.最小平均二乗アルゴリズムを用いた適応制御では，レーザ線幅が100kHzを超えるとDSP並列化のために適応制御が極めて不安定になる.搬送波位相揺らぎに不感応なconstant modulasアルゴリズムを用いても，偏波変動の周波数が10 kHzを超えると安定動作が困難となることが示された.