我が国において抗生物質医薬品の品質基準の果たした役割に関する薬史学的·公衆衛生学的考察：第1報　抗生物質医薬品の発展

摘要

我が国における抗生物質医薬品の発展は国民の健康維持に著しく貢献し，ペニシリンの国内製造が開始された1947年に人口10万対130.1の死亡率であった肺炎は，5年後の1952年には人口10万対49.9まで死亡率が低下した．同様に，ストレプトマイシンの国内製造が開始された1949年に人口10万対168.8の死亡率であった結核は，5年後の1954年には人口10万対62.4まで死亡率が低下した．クロラムフェニコールやテトラサイクリン系抗生物質は，伝染病として恐れられていたチフス·赤痢·コレラなどの腸管感染症の制御に奏効し，エリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質はペニシリンの効果が及ばない非定型肺炎などの治療に著効を示した．