グローバル金融危機下のアジア新興市場経済

摘要

2007年半ばに米国のサブプライム危機が顕在化してから2008年初めまでは，米欧先進国経済が低迷しても，新興市場経済はその影響を受けることなく成長を維持できるという「デカップリング（非連動）」論が一世を風靡していた。それは，新興市場諸国において，外貨準備が潤沢に積み上がっていることや，マクロ政策の政策運営の枠組みの改善が進hできたこと，企業部門のバランスシートが健全であること，銀行セクターも相対的に健全であることなどを背景としていた。しかしながら，同年9月に米系投資銀行リーマン·ブラザーズが破綻すると，新興市場経済も流動性不足に陥り，実物部門へも深刻な影響が生じるに至った。デカップリング論に反して新興市場経済はグローバル金融危機やグローバル·リセッションの影響を回避することばできなかったのである。