現代左官事情＜その125＞「建築と左官」

摘要

本誌の姉妹誌である「月刊建築仕上技術」2009年10月号～2010年9月号に連載された西山マルセ一口著『日本左官史序説』に左官道具·左官構法の変遷過程の概要が紹介されているので是非参考にされたい。古代の鍾道具は、壁面に土を塗り付けるということよりも、「擦り付ける」という表現が正しいようだ。古代人は、鰻が無い時代に手によって土を擦り込みながら、壁面を構成していったことが容易に想像ができる。その後、木の「へら」のようなもので土壁に搾り付けながら壁面を作り上げたと思われる。日本で、未だに鏝として使用されていた出土品は確認されていない現状である。その理由として山田幸一先生は、「高温多湿」を一因としている。荒壁土を練るとか、荒壁の壁を塗る程度であれば、専用の鋳は必要なく、農民が日頃使用している道具で充分であろうと思われる。左官道具は、「捏ねる」とか「塗る」という専用にした道具から発生したものでなく、むしろ農機具からの転用であり、派生であったと見てよい。