糊で貼り合わせた紙の強度的性質－紙系文化財の修復における紙と糊の役割－

摘要

掛け軸を始めとした紙系古文化財は約100年ごとに（表具）修復を行うのが良いとされている。この修復作業の基本ほ表具師による“裏打ち”，すなわち糊を用いた和紙の貼り合わせであり，すでに室町時代頃には現在とほぼ同様に行われてきた。しかし現在用いられる表具師の技術，例えば幕末期境から広まったとされる“打ち刷毛”と呼ばれる貼り合わせ直後に刷毛で紙表面を叩くことの科学的根拠はおろか，基本的な糊塗布量や糊による貼り合わせに伴う強度向上効果そのものについても未だほとhど研究されていない。