クローズアップ－レーザ加工法の新展開：CO{sub}2レーザとMIGアークハイブリッド溶接のステンレス容器への適用

摘要

現在，レーザ発振器の高出力化にともない，鉄鋼業界では45kWクラスのCO{sub}2レーザ発振器が20mm以上の厚板溶接にオンラインで利用されており，また，自動車業界では3～4kWクラスのYAGレーザ発振器数十台で，約3mm以下の薄板高速溶接が実用化されている。 しかし，依然として国内ではレーザ溶接の実用化が欧米に比較して少なく，以下のような課題がよく挙げられている。①レーザ発振器のコスト（フォトンコスト）が依然として高い。 ②溶接開先の組立て精度やレーザ光の狙い位置精度がきびしい。 ③溶接金属中の成分調整が難しい。 ①1億円以上の発振器が必要な10mm以上の厚板溶接をその1/2や1/3の設備コストで実現が可能。 ②成形加工部品のような開先精度が0.1mmより悪い部品に適応可能。③アルミ合金のような凝固割れを阻止する溶接金属の成分調整に有効。さらに，欧米ではドイツのフランホップアー研究所などがハイブリッド溶接法の実用化研究を実施しており，自動車の板厚の異なる異材溶接，重ね溶接，成形加工品の溶接などに実用化している。 最近では，本ハイブリッド溶接法が地中に埋められるオイルタンクの周溶接にも適用され，環境問題がきびしく高品質が要求される対象物にも実用化している。 また炭素鋼や低合金鋼などのあまり付加価値の高くない材料に対しても，高能率化が見込められる場合，積極的に実用化を推進するように見受けられる。 さらに，すみ肉溶接にも展開されつつあり，構造物も実用化の対象にできると考えているようである。 ここでは，10mm以上の厚板突合せ溶接を可能にするCO{sub}2レーザ主体のMIGアークとのハイブリッド化により，ステンレス鋼の高品質溶接の実現性を検証したので，以下に報告する。