金属-絶縁転移物質の転移点近傍における熱的挙動に関する研究(LSMO, LPMO 及びVO_2の比熱,熱伝導率,放射率変化)

摘要

宇宙機の熱的課題を解決するため，構造が簡易で軽量かつパッシブな熱制御デバイスが要求されている．その中で金属絶縁体相転移の放射率温度依存性を応用した放射率可変素子の研究開発が国内外で活発に行われている．これまでは放射率変化に着目した研究がなされていたが，金属絶縁体相転移に伴う他の熱物性変化も期待される．金属絶縁体相転移物質であるVO_2, La_(1-x)Sr_xMnO_3(LSMO)における比熱，熱伝導率温度依存性の報告例は幾つかあり，相転移前後における比熱のピークや熱伝導率の変化など蓄熱機能，熱伝導率可変機能といった機能的熱制御材料として応用が可能な要素が見られた．しかし，試料形態や測定方法によって測定値が大きくことなるため，統一した評価ができないのが現状である．そこで，本研究は金属絶縁体相転移物質の熱制御的機能発現をするためにVO_2, LSMO, La_(1-x)Pb_xMnO_3(LPMO)の比熱，熱伝導率，放射率の温度依存性を測定して転移点近傍における熱的挙動を評価することを目的としている．本稿では著者らが作製した試料を元に比熱，熱伝導率を測定した結果を報告する．