「はやぶさ2」搭載中間赤外カメラによるリモートセンシング観測

摘要

小惑星探査機「はやぶさ2」は2018年6月に小惑星Ryuguに到着以来，順調に運用を続行している．表面熱物性解明するために搭載された中間赤外カメラ（TIR）においてももこれまでに8000枚以上（2019年7月時点）の画像データを取得した．観測データからRyugu表面の熱物性（熱慣性）を推定した結果，熱慣性値は10m程度の分解能で300(Jm~(-2)K~(-1)s~(-1/2))程度であり，小惑星全体的にかなり一様であることが判明した．これまでの惑星を構成する物質の熱物性の常識だと直径10ミリメートル程度の粒子で構成される物質であると推定されたが，実際のRyuguの表面は直径数10cm以上の岩石でほぼ覆われていることがわかった．通常，岩石の熱慣性は700(Jm~(-2)K~(-1)s~(-1/2))を超えると想定したために、熱物性の観点からは想定外の結果である．この他にも通常の可視では観測されない熱物性的に特徴的，特異的な場所が次々と見出されているなど，熱物性的な観点においてRyuguの表面は非常に変化に富hでいることがわかってきた．