工業用での天然ガス転換など都市ガス補助金制度が威力発揮の時

摘要

原油価格高騰で価格が安定している天然ガスへの期待が一段と高まっているが，この数年わが国の都市ガス販売は意外なほど伸びていない。ガス事業統計をみると，平成15年度の全国の都市ガス販売量は11億9,782万m~3（1,000MJ換算，以下同じ）で前年度比4.3％増，16年度が12億6,159万m~3で5.3％の増加でしかないのだ。 今年度も4～7月で4億1,170万m~3と，前年同期比6.0％の伸びでしかない。 天然ガス新時代が謳われ，また，規制緩和，自由化で都市ガス販売が活発化しているはずにしては何とも冴えない数字だが，これはひとつに家庭用で需要家獲得が伸びず，ガス販売が低水準で推移しているため。15年度の家庭用ガス販売量は4億631万m~3で0.3％増とほとhど伸びなかっただけでなく，16年度は高気温の影響もあって3億9,613万m~3と2.5％のマイナスだったのだ。 それでも今年度4～7月は前年度の落ち込みの反動もあって前年同期比4.0％増と持ち直してきている。 それともうひとつは事業の性質上，簡単には天然ガス転換が行えないということだ。 工業用など16年度ガス販売量は5億5,612万m~3で10.4％増の二桁増だったが，先のエネ庁のアンケート結果でも示されたように大口需要家が天然ガス転換を決断するのは設備が古くなっての更新の時期が最も多く，原油価格の動向によって即座に天然ガス転換を図るケースは少ない。 エネ庁はこのため以前から各種助成制度や優遇制度を設けて天然ガスシフトを進めているが，その成果は前述のとおりだ。 しかし，最近の異常な原油価格高騰では需要家は改めて天然ガスへの転換を考えざるを得ないだろうし，都市ガス側にとっては豊富な各種助成制度や優遇制度を活用して新規需要家獲得に乗り出す大きなチャンスが巡ってきたといえよう。