世界のエネルギー消費2035年には07年比49％増加

摘要

米国エネルギー省のエネルギー情報局（EIA）が5月25日，「国際エネルギー展望2010」（International Energy Outlook2010，以下IEO2010と略記）を発表した。EIAは毎年，この時期に世界の長期エネルギー需給見通しを公表する。国際エネルギー機関（IEA）は夏～秋にかけて「世界エネルギー展望」（World Energy Outlook）を発表·改定するし，OPECも同様な「展望」を毎年示している。権威ある主要な公的3機関の「エネルギー需給展望」であるため，関係者の注目を集めている。本誌でもそれらの概要を紹介しているが，EIAのこの展望は，その予測·想定期間が現在～2035年となった。昨年までは2030年だった。特に今回の展望が注目されるのは，2008年の経済のリセッションからエネルギー需要がこの2年間世界的に大きく低迷していたが，2010年からその回復がみえてきたこと。といっても，先進諸国はまだ回復とはいい難いが，アジアの非OECD諸国の経済成長がエネルギー需要を大きく引き上げている。これが世界の需要にどう影響していくのか，2035年にはどういう絵姿に仕上げていくのか一に関心が集まっている。石油価格は2003年以降暴騰したが，2008年夏に暴落した。しかし，2009年にはほぼ一本調子の上昇となった。この行方はどうなっていくのか。この高騰のためにこの間世界のエネルギー需要は石油から他のエネルギーへと大きくシフトした。一方，地球環境問題は一層深刻化した。よりクリーンなエネルギーが世界で求められている。非在来型天然ガスの生産が米国を中心に急拡大している。化石燃料の中で天然ガスのウェイトは確実に高まっている。これらの見通しはどうなのか。しかしながら，非OECD諸国では石油需要もまた大幅に伸びている。石油の需給はどうなるのか。非在来型液体燃料の生産·需要見通しはどうなのか。関心は尽きない。EIAの見通し概略を探ってみよう。ただし，EIAは例によって3つのケース，高価格ケース，標準ケース，低価格ケースの3とおりを示しているが，ここでは標準ケース（Reference Case）を取り上げる。