原油高値更新の裏で急激に進む石油離れ

摘要

7月以降70ドル／バーレル台にあったWTI市況だが，OPEC定例総会と前後して大幅に続伸，史上最高値を連日更新し12日には79.91ドル／バーレル，電子取引では80.18ドルとついに80ドルを突破するところとなった。 これに連れ，中東産ドバイ原油も73.4ドル（12日）と史上最高値を更新，原油市況はピークとみられた夏場を過ぎてから，一段高の局面を迎えている。 米国の暖房油在庫の低さ，頻発する製油所不具合から冬場の需給逼迫懸念が増大。 相次ぐハリケーンの接近も警戒感をあおり，当面は超高値圏での動きが予想される状況。 OPECの現状追認程度の増産（50万バーレル／日）は全く相手にされず，市場では早くも追加増産の必要がささやかれている。 8月まで続いた仕切上昇のあと，9月コストは2円以上の下落となった国内市場だが，10月仕切は円高で圧縮されても再び上昇の可能性が出てきた。 業転市況も灯·軽油を中心に反騰し，コストは先高の様相。 一方，末端市況はガソリンが8月の140円台東せでようやくひと息ついたが，9月に入ってジリ安傾向にあり，業転リンクで値取りが後退した産燃油，シーズン入り価格が注目される民灯ともども，10月は市況再構築の動きとなりそうだ。価格転嫁はしかし，進めば進むはど需要離れを引き起こす。 ガソリン140円，A重油60円，インタンク軽油97円，灯油一缶1,500円という現下のレベルは，数年前には誰も予想しえなかったもの。 各油種の販売量もこれに比例し，4年前（15年度）からジワジワ減ってきたものが，一挙に減少幅を拡大。 ガソリン，軽油，A重油など主力油種を中心に，今年度4～7月の燃料油販売は前年同期比5.7％減と，19年度需要見通し（▲1.5％）を大幅に上回るペースで縮販が進行している。 加速化する国内需要減と，冬場にかけて更なる警戒を要する原油相場。憂鬱で不安な年度後半が間もなく始まる。