統計的手法に基づく楽曲中の歌声加工のための歌声分離法の検討

摘要

本研究では，楽曲中の歌声を加工する技術として，混合音を歌声と伴奏へと分離し，分離された歌声に対し加工処理を施した後に，分離された伴奏と混合する処理の実現に取り組む．本処理では，歌声分離法と歌声加工法が必要となるが，各々個別に研究が進められることが多く，歌声分離によって生じる誤差が歌声加工に及ぼす影響など未だ不明な点が多く残されている．本稿では，柔軟性に優れた歌声加工処理として統計的歌声変換法を用いる場合を想定し，歌声分離精度が歌声変換精度に及ぼす影響を調査する．従来の歌声分離法による分離歌声を目的音成分，干渉音成分，歪み成分へとそれぞれ分解し，それらを操作することで，異なる分離精度をもつ擬似的な分離歌声を生成する．得られた疑似的な分離歌声に対して，統計的歌声変換法を適用することで，分離精度と変換精度の関係を調査する．実験結果から，1）歪み成分よりも干渉音成分の方が変換精度に大きな影響を与えること，2）変換精度を考慮して歌声分離法のパラメータを調整することが可能であることを示す．