低線量放射線の人体影響：わからないことがわからない

摘要

福島第一原子力発電所の事故以降，放射線について多くの人々が知りたいことを極論すると，①人工放射線は危険だが自然放射線は安全か，②内部被ばくは外部被ばくよりも危険か，③直ちに影響のない被ばくでも，将来がhに罹らないか，子孫へ影響しないか，④少ない被ばくは身体にかえって良いか，と言うことになる。それに対して放射線のヒトへの影響でわかっていることは，急性全身被ばくで，① 0.1Gy以下では影響がわからない，② 4Gy被ばくすると2ヶ月以内に半数が死ぬ，③被ばくして生き残った場合，発がhリスクが上昇する，④被ばく時年齢が低いと高齢よりも発がhリスクが高い，と言うことになる。これらの疑問と，それに答えるために必要な科学的知見の間にあるギャップは埋まるか。答えは限りなくノーである。