フルードパワーの挑戦：階段昇降できる大腿義足膝継手'NAL-Knee'の開発

摘要

人間の下肢の機能は上肢と異なり、極めて単純である。それは簡単に“安定”と“移動”であると考えることができる。下肢を何らかの理由により切断した下肢切断者は、その機能を補うために義足を装着することになる。膝関節が残存している下腿義足等ではそれほど大きな不自由さはなく、切断端の長さや体力にもよるが、走ったり、階段を上ったりなどを普通に行なうことができる。しかし全国に約2万人いるといわれる、膝の機能を失った大腿切断者は状況が一変する。義足は通常、歩行機能として平地歩行しか考慮されていないため、日常の生活空間に存在する階段や坂において、大腿義足装着者は不自然な歩容を強いられている。長崎で大腿義足を装着している方119人に、現在の義足の生活で何に困っているか聞いたアンケート結果では、坂や階段の歩行に1番の問題を抱えていることが分かった。実際に階段を下りる途中で膝が折れ曲がって（膝折れ）転倒した事故も多い。斜面地に暮らしていなくとも、日常生活において、またスポーツやハイキング、仕事において膝を曲げ伸ばしすることが必要となる機会が数多くある。坂、階段を歩ける大腿義足の膝継手の要望は世界中で望まれている。