ウォークスルー可能なVR環境構築のためのイメージベースドレンダリング手法

摘要

本研究が対象とするのは実際の行動者の視点から見た画像の生成であるが，本論文においては行動者の移動可能な経路はある程度限定されているものとする．特に，我々が目的とするVFの構築においては，工場内で作業者が移動可能な範囲は制限されており，基本的に特定の経路上の視点が再現できればよい．すなわち，直線と向きを変える地点で近似できるものとし，この経路上の画像を生成できればよい．これは，順路が存在する美術館や博物館をVR環境として構築する場合にも有効であると考えられる．より自由度の高い移動の実現は，今後の課題とする．また，VR空間の構築は実際にそこで働く人々自身により行えるのが望ましく，特殊な機材を必要とする手法では現場での実用は難しくなる．このため，低コストであるのに加えて，例えばカメラの厳密な位置を取得するためのセンサといった特殊な機材や専門知識を必要としない手法である必要がある．我々の目的においてはあくまでVR空間内をウォークスルーするユーザが，周囲のおよその状況と現在位置を把握できればよい．厳密に3次元的位置関係を把握しなければならないロボットビジョンなどと比べ，精度に関しては比較的ゆるやかでよい．そのかわり，空間の構築段階での作業を極めて容易にすることで，ユーザの負担を極力抑制することが肝要である．この前提に基づき，本論文では第2章においてIBRの従来手法とそれらの問題点について述べ，最大の困難が手前にある物体が後方の物体を遮蔽するいわゆるオクルージョンへの対処にあることを述べる．第3章においてオクルージョンの問題について検討する．第4章においてオクルージョンに対処できる低コストなIBRアルゴリズムを提案する．第5章では提案アルゴリズムの実験及び考察を行い，併せて今後の課題について検討する．