ベイジアンネットワークを用いた乱気流発生要因の考察～旅客機の安全な離着陸のために

摘要

大型航空機事故には，運航時に発生した乱気流の影響が考えられる.大事故の例として，1966年の英国海外航空機空中分解事故では，富士山付近の上空で乱気流に巻き込まれ空中分解したものがある.また1993年には花巻空港に着陸進入中に激しい乱気流に巻き込まれた，日本エアシステム451便着陸失敗事故がある.航空機が墜落するような大事故は減少傾向にあるが,乱気流に巻き込まれ，機内の物が浮いてしまうマイナスGが発生するような事象は発生している.2016年11月，ANA所属の旅客機が鹿児島空港を離陸後，上昇中に体が浮き上がるような現象が起き，客室乗務員が重傷を負った.原因は層積雲の周辺に発生した乱気流による機体の動揺と考えられる.各エアラインでも，当然ながら乱気流に対する取り組みを実施しており，強度の低層乱気流が発生している情報がある場合には，着陸を回避しているケースもある.航空局が定めている航空重大インシデントの定義中に，「事故が発生するおそれがあると認められる事態の報告」にも「気流の擾乱その他の異常な気象状態との遭遇」があり，強度の乱気流を含めた情報共有が必要である.