南アジアの自動車市場と産業経済－インドを中心にして：インドの二輪車産業の歴史と現状、そして今後の展望

摘要

インド自動車産業のなかで経済自由化の影響を最初に受けたのは、スクーター（モペッドからペダルを取った形式のスターレットを含む）、モーターサイクル、モペッドから構成される二輪車産業であろう。 多くの家計にとって四輪車はいまだ高嶺の花であり、高い機動性を持ち、低い維持費の二輪車が好まれている。 二輪車市場は2004年度に国内販売台数620万台を超え、それはインド国内自動車販売台数の約79％に相当する。 また国際的な見地から見ても、その生産台数は中国に次いで世界第2位である。 二輪車産業を牽引しているのはモーターサイクルである。 表1のように、モーターサイクルは生産、国内販売、輸出のいずれの項目においても大きなシェアを占めており、国内販売は1993年度以降、年率平均24％で成長している。 ただし、モーターサイクルが大きな国内販売シェアを占めるようになったのは90年代後半からであり、2000年に入ってからは輸出も拡大している（図1、図2）。 長年主流であったスクーターからモーターサイクルへ需要がシフトした要因としては、以下が挙げられる。(1)農村家計の所得が上昇し、農村では燃費効率が良く、タイヤの大きいモーターサイクルが好まれること。 (2)税制の合理化やモーターサイクルの大量生産が可能となり、スクーターとモーターサイクルの価格差が縮小したこと。 (3)モーターサイクルへの需要が伸び始めたちょうどその時期に、消費者ローンが普及し始めて後押しとなったこと。 (4)スクーター部門では長い間モデルチェンジがなされなかった一方で、モーターサイクル部門では多くの新しいモデルが輩出されたこと。 また、積極的な宣伝活動を通じ大衆、特に若い世代に訴えかけたことである。 しかし、このような現象は、以下で述べるように80年代以降の政府の政策転換に起因している。