（シリーズ）自動車交通の話題を追って－その(19)：日本型都市の制約を考慮した交通戦略の立案プロセスと論点～都市とクルマの共存をめざして

摘要

持続可能な交通戦略を、わが国の都市の実情に合わせて具体化するためには、都市の制約を考慮した適用上の工夫が必要である。 日本交通政策研究会の都市交通計画研究会では、いくつかの都市に共通する課題を選定し、具体的な事例検討を基に、その解決策を提案した。 都心部など、高密度な都市活動を支える交通戦略の基本は、通過交通排除と交通空間の再配分にあるが、骨格的な交通インフラの不足するわが国の諸都市において、その適用には、より柔軟な発想と工夫が必要である。 本研究では、鉄道駅周辺のインフラ不足地区について、交通空間の再配分を検討し、曜日や時間帯別の配分ルールの設定が有効であることを確認した。 同様に、居住環境地区の適用に際しても、幹線道路に囲まれていない地区への適用方法を、具体的な居住地区の対策検討事例を基に、整理した。 また、わが国の地方都市における交通戦略において、新規施設整備として期待の高いLRTについて、市民への情報伝達に着目し、交通シミュレーションと三次元動画システムの活用によって、導入時の道路混雑の変化や景観イメージを明確に伝達する手法を開発し、具体的な都市への適用内容を整理した。 人口減少による道路の維持管理費用の削減、交通戦略の継続的な見直しにおける評価方法、並びにコペンハーゲン都市圏の国境を越えた新たな圏域を対象とする交通施設整備事例、金沢都市圏の開発戦略の変容を整理した。ここでは、日本型都市の制約を考慮した交通戦略を構築し、実施し、見直していくための基本プロセスを整理するとともに、交通戦略として何を議論するべきかを説明する。