X線CTによる凍結ゲルの氷結晶生成挙動と凍結濃縮相の観察

摘要

食品凍結において、氷結晶の大きさ、形、数、および生成場所といった形態は最終品質に大きく影響する。一般的に氷結晶の生成,成長挙動および最終的な形態は，凍結の遅速、すなわち伝熱挙動に依存するとされ、理解されてきた．一方で,食品は複合系であることから，そこに生成する氷結晶は複雑な挙動を示す．我々はこれまでの研究で，豆腐中に生成する氷結晶の形態観察をX線CTによって行ってきたが，同一サンプルで凍結速度を変えた場合，氷結晶のサイズが変わるだけでなく，氷結晶の形状や生成場所の分布が大きく異なることが観察された．具体的には，エアブラストフリーザーを用いて急速凍結したサンプルでは，表面部では針状の細長い氷結晶が観察されたが，中心部には氷結晶の生成痕が観察されなかった．伝熱の側面から考えると，氷結晶が大きく成長するであろう試料中心部に氷結晶がほとhど見られないというこの現象は，凍結濃縮層によって氷結晶の成長が妨げられ，また濃縮相が低温下でガラス転移することに影響を受けていると予想される．そこで本研究では，この現象と仮説をより詳しく検証することを目的とし，ゼラチンゲルとアガロースゲルについて，数種類の濃度で調整したゲルを用意凍結し，X線CTによる氷結晶成長挙動の観察を行なった．また併せて，種々のゲルについてDSC測定を行ない，低温でのガラス転移の有無，およびガラス転移を生ずる場合はガラス転移点の測定を行い，氷結晶の生成挙動への影響を考察した．