帯水層蓄熱空調システムの普及に向けた研究開発低GWP冷媒ターボ冷凍機を用いた経済性·環境性評価

摘要

エネルギー需要の大きな大都市の多くは沖積平野や堆積盆地に位置するが，これらの地域では帯水層が発達していることが多い.この帯水層にある地下水の温度は，年間を通じて年平均気温+1～2°Cであり，これをヒートポンプの熱源として利用すれば，省エネルギーに有効である.また臨海部では一般的に地下水流れが遅いことから，季節間にわたる蓄熱利用も可能であり，投入した熱量の8割程度が回収できるだけでなく，夏冬で熱需要のデマンドが逆転することから，さらなる省エネルギー効果が期待できる.しかしわが国では，戦後の高度成長期に大量の地下水揚水を行った結果，地下水位の低下から粘土層の圧密沈下による地盤沈下を引き起こし，都市インフラに甚大な被害を生じたことから，現在でも厳しい揚水規制が続いている.地下水の熱源利用を考える際，熱利用後の地下水の還水は，地盤沈下防止の観点から特に重要であるが，計画地点の水質に左右され，井戸の目詰まりを招くことが多い.Table1に示すように，これまで様々な実験検証が行われたが，実用規模として100m~3/hクラス(200RT相当)のシステムの実用化は困難であった.