最近の表面改質技術の効果的活用法～トライボコーティングを中心に：（事例2）建設機械部品へのDLCの適用

摘要

機械部品（とくに建設機械）においては鉄を主たる材料として採用し，その表面を耐摩耗，耐焼付き，耐腐食などの使用される環境条件に合せて表面処理を施している．従来採用されてきた表面処理としては，焼入れ，浸炭，窒化などの熱処理や，Crメッキ，溶射などがある．とくに熱処理（焼入れ，浸炭）は，鉄に配合する合金元素や，熱処理条件を変えることによって，各部品の使用用途に応じた硬さや硬化深さを得ることができ硬さと靭性のバランスに優れ広く使用されているのは周知の通りである．しかし，近年コンポーネントのコンパクト化や，ディーゼルエンジン燃料噴射系での燃料噴射圧増大により，摺動部位では高PV値化が進行している．また，潤滑に関しても鉱油に対して潤滑特性が劣るバイオ作動油や難燃性作動油が使用されたり，排ガス対応で軽油の低硫黄化が進行していて，潤滑条件が厳しくなっている．さらに，二酸化炭素削減のためにエンジン，トランスミッション，油圧機器の摺動抵抗の低減が求められて来ている．このような要求に対して，従来の鉄材に対する熱処理技術だけでは対応がむずかしくなって来ており，従来の熱処理層の上にさらにもう一層表面処理層を形成する必要が出てきた．従来からもCrメッキや溶射などがこの目的のために採用されているが，Crメッキでは対応できないほどの高PV倍であったり，溶射では，剥がれの心配や施工後の研磨が必要で高コストになるなどの理由で採用されてきていない．そこで，近年技術進歩の著しい蒸着法（PVD法：Physical Vapor Deposition，CVD法：Chemical Vapor Deposition）の適用検討および採用が各方面で進められている．その中で，本稿ではDLC (Diamond Like Carbon)膜の機械部品適用に関して事例を交えて述べたい．