直線アレーアンテナを用いた地上デジタル放送高速移動受信機における逐次型移動速度推定法

摘要

地上デジタルテレビ放送の高速移動受信においては，伝搬路の高速時変動に伴う伝送特性の劣化が大きな問題となっている．この間題を解決するため，著者らの一部は，アレーアンテナにより受信した信号を空間領域で補間して大地に対して静止した点の受信信号を推定することで伝搬路の時変動を補償する方式を提案している．ここでは，2個の時変動補償器に互いに異なる移動速度を設定して並列に動作させる．そして，補償後の受信品質の差を観測し，受信品質がより高くなるように移動速度の設定値を更新することにより移動速度を推定し，大地に対して静止した点を算出することを可能にしている．しかし，この方式では，復調部が2個必要となるため，受信機が複雑になるという問題があった．そこで，本報告では，補償器を並列に動作させる代わりに，受信信号の偶数番目と奇数番目で移動速度の設定値を変化させて受信品質を観測し，逐次移動速度の設定値を更新することで，1つの補償器および復調器だけで移動速度の推定を可能にする新しい移動速度推定法を提案する．計算機シミュレーションにより，提案方式は，従来とほぼ同じ収束特性および推定精度を保ったままハードウェア規模の削減が可能であることを明らかにする．