鈴虫の鳴き声による個体識別へ向けた高解像度音響解析

摘要

鈴虫は，その鳴き声で我々日本人へ秋の到来を知らせる風物詩として，長い間愛されているコオロギ科に属する昆虫の一種である．鈴虫のその鳴き声を発する部分は左右の前はねについたヤスリとツメであり，それらを高速で擦り合わせることで音が出る機構であると言われている．本研究では，鈴虫の鳴き声による個体識別に向けた基礎的な検討として，無響室内において768kHz／32bitハイレゾ録音システムによりその鳴き声の計測し，鳴き声による個体識別の可能性を検討した．768kHz／32bit音響計測を用いることで，鈴虫の鳴き声の特徴的な時間音圧波形や，その周波数領域の音響特性をより高精細に捉えることができた．また，鳴き声の特徴と機械学習を用いることで鳴き声による個体識別が可能であることを示した．さらに広帯域にわたる音響特性は個体識別においても精度の向上に寄与することが明らかとなった．